法律まめ知識アーカイブ

動産の取得時効制度

民法では,権利の客体となる物(ぶつ)として,不動産と動産を区別しています。
不動産とは,土地(その定着物も含む)と建物を言います。
動産とは,不動産以外の物(ぶつ)です。例えば,パソコン,本,ペン,ジュース,自転車,印鑑,紙等々不動産を除くあらゆる物です。

その動産について,民法では,即時取得制度を採用しています(民法192条)。
動産の即時取得制度とは,簡潔に説明すると,動産の取引については,譲渡人が無権利者であっても,譲受人が善意無過失で譲渡人が権利者であると信頼した場合は,譲受人は有効に権利を取得する,という制度です。

例えば,AさんがBさんからパソコンを買ったとします。ところが,Bさんは,そのパソコンをある店から盗んでいたとします。そうすると,そのパソコンはそのお店の物であり,Bさんは無権利者です。この場合,原則は,無権利者から権利を譲り受けることはできませんから,Aさんはパソコンを自分の物とすることはできません。

しかしながら,Aさんが,Bさんが権利者であると善意無過失で信頼していた場合は,即時取得が成立し,例外的に,Aさんは,パソコンを有効に取得することになります。
このような動産の即時取得制度の趣旨は,動産の取引安全を図ることにあります。

なお,不動産には即時取得制度はありません。

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山菜と蝶々

Aさん所有の山がありました。
そこには山菜がたくさん繁っています。
お花畑もあり,蝶々がたくさんいます。

さて,その山菜と蝶々は誰の所有物でしょうか?

まず,山菜は,法律的には,土地に付合(民242)しており,土地の構成部分とも言えるため,土地の所有者であるAさんの所有物になります。仮に,第三者が無断で山菜を採ったら,窃盗になってしまいます。ご注意ください。
次に,蝶々は,自由に山を飛び回っており,土地には付合しておらず,法律的には,誰の所有物でもありません。もし捕まえれば,捕まえた人が所有者になります。これを無主物先占(民239)と言います。ですから,仮に,第三者が無断で捕っても,窃盗にはなりません。

なお,住居等であれば,無断で入ると住居侵入罪となりますが,それと異なり,山に入ること自体は罪にはならないと思われます。

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請求権の請求原因

ある請求権(人が人に対して何かを要求する権利)が発生する原因については,民法が定めていて,大きく分けて3つあります。

①契約②不当利得③不法行為の3つです。

契約とは,「申込」と「承諾」の合致により成立する請求権の発生原因です。
例えば,売買契約,賃貸借契約,委任契約,雇用契約等があります。
売買契約で言うと,例えば,八百屋で,客が店主に「大根1本ください」と申込をして,店主が客に「いいですよ。1本100円ですよ。」と承諾することにより,客は店主に大根を請求する権利が発生し,店主は客に代金100円を請求する権利が発生するのです。
請求権の発生原因としては,この契約がもっともポピュラーです。

不当利得とは,法律上の原因がなく利得が発生した場合に,利得を返してくれという請求権が発生する,請求権の発生原因です。
例えば,詐欺によりお金がだまし取られたとき,取消ができますが,取消をすると,詐欺行為は遡及的無効になるので,お金は法律上の原因がなく欺罔行為者に帰属していることになり,不当利得返還請求権に基づいて,それを返還してもらえることになります。

不法行為とは,故意・過失により,人に損害を発生させた場合,その損害賠償の請求権が発生するという,請求権の発生原因です。
例えば,交通事故で人損・物損が発生した場合,それは前方不注視などの過失に基づいて損害を発生させた場合なので,不法行為に基づいて,損害賠償請求ができます。

ちなみに,請求権を権利者ではなく義務者の側からみると,弁済(支払)義務となります。

まとめですが,請求権(弁済義務)の発生原因は①契約②不当利得③不法行為です。

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事実の錯誤

Xは,日頃恨みに思っていたAを殺そうとして,ピストルでAを狙撃したところ,弾は外れて近くを歩いていたBに命中し,Bは死亡した。

上記事例で,Xに何罪が成立するでしょうか。

常識的に考えると,
Aに対しては,殺そうと思ったのに殺せなかったため,殺人未遂罪
Bに対しては,殺すつもりはなかったのに,誤って死亡させたため,過失致死罪
となろうかと思います。

しかし,判例・通説の考え方は違います。
Aに対する殺人未遂罪とBに対する殺人罪の成立を認めます。

判例・通説は,Bに対する殺人の故意を認めるため,このような結論になります。
そもそも,故意責任の本質は,規範に直面し,反対動機を形成しえたのに,あえて犯行を行った反規範的人格態度にあるところ,人には「人」を殺してはならないという規範が与えられているのであって,Aという「人」を殺そうと思った以上,殺人の故意は「人」であるBに対しても認められる,と説明されます。

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殺意の認定

殺人罪で起訴されたが,被告人は「殺すつもりはなかった」と弁解している場合(殺意の否認)が,よくニュースで「起訴事実を否認し,殺意はないと弁解しました」と報道されるなど,ままあります。
ここで争点となるのが「殺意の認定」です。

前提知識から説明します。
殺意とは,人を殺す行為(殺人行為)を認識し認容する意思のこと(簡単に言えば,人を殺すつもりで殺人行為をすること)を言います。
殺人行為とは,人の生命を断絶するに足りる現実的危険性を有する行為を言います。
例えば,人に向けてマシンガンを乱射する行為は,人の生命を断絶するに足りる現実的危険性を有する行為であり,殺人行為です。
この殺人行為を認識し,認容(殺してもかまわないと思う)すれば,殺意が認められます。

なお,殺意には,大きく2つに分けて,確定的殺意と,未必的殺意があります。
確定的殺意とは,積極的に「殺してやる」との意思を有する場合です。
未必的殺意とは,消極的に「殺してやるとまでは思わないが,死んでも構わない」との意思を有する場合です。

殺意の認定は,検察側としては,それをどのように裁判官に認めてもらうか,弁護側としては,認めてもらわないようにするか,が裁判の争点・大きなポイントになります。

このような場合,証拠裁判主義をとる我が国の裁判制度のもとでは,行為の客観的状況(客観面)を証拠で認定し,そこから殺意を認定する手法がとられます。

まずは,行為態様,凶器を見ます。
人に向けてマシンガンを乱射していた被告人が,「人を殺すつもりはなかった」と言ったとしても,人に向けてマシンガンを乱射する行為自体,殺人行為としての危険性が高いので,それを行う場合,殺す意思はあるだろうという思考パターンがとられ,殺意が認定されます。
人をナイフで突き刺した被告人だったらどうでしょうか。
人体の枢要部(心臓や頭)を狙っているか,刺した回数はどうか,傷の深さはどうか,ナイフの刃渡りはどうか,ということを総合的に考えて,殺意を認定します。
例えば,刃渡り20センチのナイフで,心臓付近を5回深く刺していた場合,これは強固な殺意が認定されると思われます。
逆に,刃渡り5センチのナイフで,右腕付近を2~3回浅く切りつけていた場合,これは殺意は認められないでしょう。

次に,動機も見ます。
その被告人に被害者を殺す動機があったか。怨恨等がなかったか。これも関係者の供述から明らかにされ,動機があったかを見ます。

ほかにも,判断要素はありますが,大まかには,以上のような要素から被告人をとりまく客観的状況を総合的に認定し,客観面から,殺意があったか否かを判断するのです。

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倒産法制

企業の倒産に対する法(倒産処理法・倒産法制)には,大きく分けて,「清算型」の制度と「再建型」の制度の2つがあります。

清算型の制度というのは,企業を存続させないで,財産を清算し,債権者に分けるタイプの制度です。これに対し,再建型の制度というのは,企業を存続させ,債権者の協力を得ながら,企業の再建を図るタイプの制度です。

清算型の法律としては,①破産法,②会社法に規定がある特別清算,があります。
再建型の法律としては,③民事再生法,④会社更生法,があります。

①破産法は,おなじみの法律だと思います。精算型の代表です。
②特別清算は,株式会社にのみ適用されます。ほとんど実務では使われていません。
③民事再生法は,現経営陣がそのまま在任し,再生計画案を策定し,再建を図ります。
④会社更生法は,大規模な株式会社に適用されます。現経営陣は退陣し,経営のプロが管財人となって,会社再建を図ります。

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刑法の思考パターン

犯罪とは,構成要件に該当し,違法,かつ,有責の行為を言います。

構成要件とは,一般に言う法律要件のことで,~罪として条文に書いてあって,それを主体,客体,行為,結果等に分類しうる要件事実のことです。
例えば,殺人罪の構成要件は,「人」という客体を「殺す」という行為をすることです。
この殺人罪の構成要件の解釈上の問題点としては,例えば,胎児は「人」かという問題があったり,例えば,硫黄を投与した行為(硫黄は医学的には少量ならば飲んでも人は死なない)が殺人行為といえるかという問題があったりします。

単純にAさんがBさんを刺殺した場合を想定しますと,これは殺人罪の構成要件に該当します。
とは言っても,まだ殺人罪が成立しません。
最初に定義づけたように,違法で,有責である必要があります。
これは違法性阻却事由がないか,と,責任阻却事由がないかという判断と同義です。

違法性阻却事由とは,刑法35条などに規定されており,正当行為や正当防衛や緊急避難が成立する場合を言います。
例えば,先ほどの想定事例で,実は先にBさんがAさんを殺そうとしてピストルで体に弾を撃っていた,Aさんは,身の危険を避けるため,仕方なくBさんを刺した。と言うような事情があった場合は,正当防衛となり,違法性が阻却され,犯罪不成立になります。

責任阻却事由とは,責任能力,責任故意などがない場合を言います。
例えば,先ほどの想定事例で,Aさんが,認知症で判断能力が全くなかったような場合は,責任能力がなく,責任が阻却され,犯罪不成立になります。

構成要件に該当し,違法性阻却事由がなく,責任阻却事由もないと,犯罪成立となります。

平成21年5月までに裁判員制度がスタートします。
犯罪の成否に関し,裁判員の判断が要求されるのは,以上の3場面です。
すなわち,まずは,構成要件該当性の有無,です。
次に,違法性阻却事由の有無,です。
最後に,責任阻却事由の有無,です。
事案により,構成要件該当性のみが問題となったり,違法性阻却事由が問題になったりすると思います。

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人権侵害

よく耳にする,「人権侵害」と言ったときの,「人権」ですが,人権とは,対国家との関係で問題になるものなので,使い方に注意・区別が必要です。
言い換えると,人権侵害があった,と言う場合の正しい人権侵害の相手方は,国家(行政,公共団体,公務員)になります。

これに対して,私人間(市民間。侵害の相手方が民間人の場合)では,「人権侵害」という言い方は本当は正しくありません。
例えば,Aさんから嫌がらせを受けたからと言って,「Aさんから人権侵害を受けた。」というのは法律学的には正しくありません。人権の侵害の相手方が私人だからです。

人権という概念自体,歴史的に,専政権力(国家)に不当に圧力を受けてきた人民(国民)が,権力に立ち向かうために生み出されたことからも,対国家との関係で問題となることがお分かりいただけるかと思います。

なお,私人間では,民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求や,民法90条の公序良俗違反の中で,権利(人権ではない)侵害といった形で斟酌されます。
人権を間接的に私法に適用していく考え方なので,間接適用説とも言われます。

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横浜弁護士会という名前

弁護士は,日本弁護士連合会(日弁連)に登録しないと,弁護士業務ができません。
そして,都道府県ごと(北海道はブロック)に単位会という任意団体があり,弁護士はそこに所属します。

例えば,神奈川県内の弁護士は「横浜弁護士会」という単位会に所属します。
私も横浜弁護士会に所属しています。

最近問題になっているのは横浜弁護士会の「横浜」という名前です。
例えば,長野県内の弁護士は「長野県弁護士会」,山形県内の弁護士は「山形県弁護士会」といったように,単位会の名前は都道府県名が附されるのが一般なのです。

神奈川県内の弁護士といっても,必ずしも横浜に事務所を構えていない弁護士は多いです。
私もそのひとりで鎌倉市の大船に事務所を構えています。
神奈川県内には,横浜地裁の支部が4つあります。川崎,横須賀,小田原,相模原です。
このような横浜以外の地区に事務所を構える弁護士はけっこういます。

そこで,最近議論になっているのが,改名問題です。
横浜弁護士会を「神奈川県弁護士会」にするという案です。

私個人の意見としては横浜弁護士会という名前は歴史があるし,センスもいいので,改名には一応反対です。

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差し支え

差し支え
名詞:(法曹業界用語)その時間帯のスケジュールが埋まっていること。

(具体例)
裁判官「次回期日は,12月○日午前11時でいかかですか」
被告側弁護士「お受けできます」
原告側弁護士「すみません。差し支えです。福岡出張が入っています」
裁判官「それでは,12月×日午前10時はいかかですか。
原告側弁護士「お受けできます」
被告側弁護士「差し支えです。午後なら空いているのですが」

というように繰り返され,期日が先へ先へと伸びるのが一般。
そのため裁判に時間がかかるという一面もあると思います。

なお,差し支えが少ないと,暇な弁護士と思われてしまう一面があります。
弁護士はプライドが高いので,こういうことをけっこう気にします。

あと,夏休み(休暇)にあたるときに,理由を述べず「差し支えです」という使い方をしたりする弁護士もいます。
実は私もたまに使います。
裁判官や相手方弁護士は仕事だと思っているのですが,実は休暇だったりします。
これは表情からも察せられないことを要する高等テクニックです。

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